新聞配達逃げる

もう何十年も前の話なので今もそうなのかは知らない。
ということを最初に断っておく。
また、地域によっても違いはある。
私は埼玉県川越市と東京都北区で新聞配達をしたが
川越の販売所はアットホームで、以下のようなことは皆無だった。
 

 
新聞配達員にはいろんな人がいた。

私たちのような新聞奨学生
いずれは自分で販売所を持ちたいという人
もちろん自分の職業として選んでいる人

そして借金をかかえてやってくる人

借金を一括で返済してもらい
何年か働いて少しずつ返していくのである。

新聞奨学生も学費を一括で払ってもらい
2年とか4年とか働くのだから似たようなものである。

昔で言えば丁稚奉公みたいなものだろうか。

倒産した会社の社長だったらしい人がいて
飲むと必ず、俺は何人も人を使っていたと言っていた。

ある日
朝ご飯を食べていると
まだ届かない。まだ届かない。と
電話がじゃんじゃん鳴り出した。

所長といっしょにそのルートを回っていくと
新聞がたっぷり積まれたままの自転車が
放置されている。

逃げたのである。

これはまだいい方で、ひどいのになると
集金に出かけたきり、そのお金を持って逃げるのもいる。

所長と折り合いが悪く、
「いつかケツをまくってやるんだ」と
二十歳そこそこの私にいつもいつも言う人がいた。
ある日、布団袋を持っているか。貸してくれと言う。
引っ越し時などに布団を詰めるエンジ色のアレである。
その後まさしく「ケツをまく」って
必ず返すからと言ったくせに未だに返ってこない。

そんなんでも不思議と恐い人はひとりもいなかった。
みんな我々若者には優しいひとだったように思う。

一括立替返済してもらった分はどのようになっているのか
知るよしもない。

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