まことに東京は恐ろしいところである。
川越の販売所では専属配達員は地元の人で
それぞれ家族も自宅も持っている人だ。
ところが東京の配達員はみな働き盛りのバリバリで
いつトンズラしてもおかしくないような人が多い。
よく飲みに連れて行ってくれた配達員がいて
自宅にもお邪魔し、
“奥さん”の手料理をいただいたりもした。
40歳前後だったろうか
男っぷりがよく、じつにもてそうな人だった。
ある日、引っ越しの手伝いを頼まれた。
指定の駅へ行くとその人の引っ越しではなく
A子さんの引っ越しだ。
荷物の搬入が終わって3人でお茶を飲んでいるとき
すべて合点がいった。
A子さんは別な新聞販売所の新聞奨学生で
同じエリアの配達中にでも仲良くなったのだろう
2〜3駅離れたところにアパートを借りて
住まわせるというのだ。
田舎から出てきた若い学生を、
おじさんが誑かしても良いものだろうか。
目の前で展開されるただならぬ雰囲気に
若い自分は赤面するばかりだった。
後日“奥さん”から
「あの人が帰ってこなくなった」と電話を受ける。
私は申し訳なかった。
この専属配達員と新聞奨学生のできちゃった話は
私の東京での新聞配達たった2年半のうちに
身近で2件も起きている。
おことわり:
この新聞配達シリーズはあくまで限られた経験に基づくもので
すべての新聞販売所の名誉を毀損するものではありません。
関連:「新聞配達逃げる」